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更新日:2021年11月29日
(16)オイルターミナル火災(平成6年10月9日)
被害地域
上田市
被害状況
人的被害(人):死者3/負傷1
住家被害(棟):一部損壊3
普段からの備えが役に立つ。
上田市S.Mさん(当時58歳・消防長)
その日の夕方、すでに勤務から帰っていた私は家でくつろいでいました。この日は長男夫婦も家に遊びにきていたのですが、午後6時22~23分頃、突然長男の妻が2階で「火事だよ!」と叫びました。長男と私は自分の家が火事だと思い、急いで消火器を抱えて2階へ駆け上がろうとしましたが、玄関で私の妻が「お父さん、西上田駅のほうだよ!」と呼び止めました。あとで妻から聞いたところ、その瞬間、ドーンという音とともに、身体に揺れを感じたそうです。
大変なことになったと思った私は、119番に電話をかけ、通信勤務員に火事の通報が入っていることを確かめると、急いで古い作業着に着替え、自宅から目と鼻の先の現場に自転車で向かいました。真っ先に現場に到着した私は、ここで初めてタンクヤード施設からの火災だと確認できました。すでに3基のタンク付近は一様に火に包まれ、危険物火災特有の真っ赤な炎と黒煙が空高く吹き上がり、あたりはガソリンの臭気に包まれて、壮絶な火災の様相を呈していました。
それからすぐに地元消防団第八分団が到着し、本格的な消防活動にかかりました。まず負傷した作業員たちを収容する救急車を呼んだあと、市内各所、隣接消防本部から化学消火剤の調達を指示し、さらに近くを通るJRは列車運行が危険な状態とみて、上下線を全面ストップさせました。午後7時過ぎには、タンク西側の住民に近くの公民館への避難を指示しました。
現場の下塩尻は年間を通じて西風が吹くことが多く、タンクヤードの西から発生した火災は風による延焼が危惧されましたが、この日は不幸中の幸いか風がほとんど無く、ポンプによる放水により、隣接するタンクや付近の住宅への延焼を防ぐことができました。
しかしこのときの火災の被害を最低限に防ぐことができたのは、なんといっても普段から消防団員たちに火災に対する備えがあったことに尽きると思います。
実は火災のちょうど1年前に現場で大規模な消防演習を行いました。演習には上田地区のみならず、いざというときに応援を要請する近隣の坂城、戸倉、上山田地区の消防本部からも参加してもらいました。そのため団員はみな現場の様子をよく知っていましたので、こちらの指示をすばやく理解し、タンク火災に欠かせない包囲網を敷く消火活動を円滑に進めることができました。当初は一晩中燃え続けるかと思われたこの火災も、予想以上に早く、また団員にけがもなく、午後9時56分に鎮火させることができました。
実際に大火災の消火を体験した者として、普段からの訓練や備えがいかに大事かということをみなさんには知ってほしいと思います。これはとても地道なことです。たとえば火事のとき、家庭にある消火器を慌てずに使うことができるでしょうか。自分の家が燃えそうだという追い込まれた精神状態のなか、見るのとやるのは大違いです。だからこそ、地域の防災訓練に進んで参加して、消火活動を体に覚えこませておいてほしいのです。
基本的には自分の地域や財産は自分で守るという意識、自主防災の意識が大切です。火事は人ごとではありません。もしものときに消防車がくるまでの数分間にも、自分で何ができるかが問われます。一人ひとりが高い防災意識を持って、普段からの備えを怠らないでほしいと思います。
教訓
伝えたいこと
地域の防災訓練に進んで参加して、消火活動を体に覚えこませておいてほしい。
◆「自分の身は自分で守る」という自主防災の意識をもつことが大切。
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