「山と自然のサイエンスカフェ@信州」を開催しました:令和6年度(2024年度)
「山と自然のサイエンスカフェ@信州」は、当研究所の研究員や外部からお招きした研究者が、信州の大きな特色と魅力の源である“山と自然”に関する話題や社会的な注目度が高まっている“気候変動“に関する話題を提供し、参加者のみなさまとともに気軽に語り合うというイベントです。
ここでは、令和6年度(2024年度)の開催の様子をお伝えします。
令和6年度(2024年度)の開催日程
回 |
テーマ |
開催日 |
備考 |
1(通算62) |
信州の気候の多様性と可能性 |
令和6年5月22日(水曜日)
|
開催済み |
2(通算63) |
高温化時代の学校建築を考える |
令和6年6月19日(水曜日) |
開催済み |
3(通算64) |
人の暮らしと生きものたち |
令和6年10月25日(金曜日) |
開催済み |
4(通算65) |
ライチョウの利用環境を探る |
令和7年2月18日(火曜日) |
開催済み |
第4回(通算第65回)「ライチョウの利用環境を探る」
概要
- 日時:令和7年(2025年)2月18日(水曜日)17時30分~19時
- 場所:くらしふと信州(長野市門御所町1250₋1)
- 話題提供者:堀田昌伸(環境保全研究所・自然環境部・研究員)/司会:尾関雅章(同・主任研究員)
- 参加人数:27名

内容
- 鳥類の体にGPSロガー(正確な位置情報を記録する装置)を装着し、渡りルートや越冬地、生息環境の解明が行われています。
- このような調査はライチョウではこれまで日本では行われてきませんでしたが、2021年から、ライチョウに適したタイプやつけ方の試行を含めた調査を始めました。その結果、なわばりをつくっている夏期となわばりを解消した秋期を比較すると、行動する範囲があまり広がっていないこと、尾根などの自然の境界を上手く利用して、他のライチョウと距離を保っていることなどがわかってきました。
当日の様子
会場からも随時多くの質問が出て、活発なやり取りが行われました。アンケートでは
- ライチョウに係る興味深いお話を聞かせていただきました。研究者がそんなに多くないとのこと、将来にわたってライチョウの保全に係る研究が継続されるよう期待しています。
多くの方に関心を持って聞いていただき、参加者の半数近くが初めて参加する方々でした。
その他、信州自然講座で作成したライチョウポスターを会場外から見かけ、飛び入り参加して下さったアメリカユタ州の研究者
(偶然にも!)の方からも貴重な話を聞くことが出来、終了後も研究員同士話が尽きませんでした。
多くの方にご参加いただきありがとうございました。
会場の様子:満員御礼の中、ライチョウへの関心を高める有意義な時間となりました。
第3回(通算第64回)「人の暮らしと生きものたち」
概要
- 日時:令和6年(2024年)10月25日(金曜日)17時30分~19時
- 場所:くらしふと信州(長野市門御所町1250₋1)
- 話題提供者:小林慶子(環境保全研究所・自然環境部・研究員)/司会:尾関雅章(同・主任研究員)
- 参加人数:14名

内容
- 人口減少時代に突入し、里山から人の暮らしが消失しつつある今、人の暮らしによって生み出された里山の自然の成り立ちと、里山から人の暮らしが消えた時の自然の変化に関する研究を紹介しながら、里山の自然と、里山を育む「里山暮らし」の価値を考えました。
- 講座の前に、参加者の方に里山利用の経験や里山の自然に対する意識や関心についてアンケートを行い、各人の意識や関心の程度を把握しました。講座では、農林業を中心とする伝統的な人の暮らしによって生み出された里山の自然の成り立ちと、里山から人の暮らしが消えたとき、人の暮らしによって育まれてきた里山の自然はどう変わるのかを紹介し、参加者全員で、里山の恵みを次世代に引き継ぐためにできることを考えました。
- 講座の終盤では、再度、講座前と同じアンケートを行い、講座を通じて自身の意識や関心の程度が変化したかを確認した上で、参加者全員で、関心を持った内容や意識が変化した内容にシールを貼るまとめボードを作成しながら、里山の自然と、それを育む「里山暮らし」への関心を喚起するためにどのような内容が有効かを考えました。
- まとめボードによって、今回の参加者は、人の暮らしが自然から得られる便益「生態系サービス」の説明に関心を寄せ、講座の前後で生態系サービスやそれを育む「里山暮らし」が失われることのリスクや、保全活動への共感する思いが変化したことを確認しました。何をどう伝えると効果的か、里山の保全活動などに関心のある参加者のみなさまとの意見交換も行いました。
当日の様子
会場からも随時多くの質問が出て、活発なやり取りが行われました。多くの方にご参加いただきありがとうございました。
アンケートでは
- 里山について学ぶことが出来てありがたかったです。少人数で良かったのですが、もっとたくさんの人に聞いてほしい、長野県市町村の農林課の人とか関係する人に関わってほしいと思いました。義務教育養成機関の生徒さんたちももっと関わって教員になった時に子どもたちに話してほしいなと思いました。
- 里山と植生、その他に伝わる野生動物との関わり(たとえば盆花は野にある花)については興味があり、個人的にもう少しいろんな話を聞きたいと感じています。
- 80か所×10kmにわたる調査の苦労や、調査中のエピソード・ハプニングなど、研究をまとめられるまでのバックヤードのような話をもっと聞かせてほしかった。
など、予定している時間内では収まらないほど中身の詰まった回となりました。
また、”サイエンスカフェなので、話の途中であっても、参加者と話題提供者がもっと自由に対話を楽しめたら良いのでは”、とのご意見もいただきました。“対話を楽しめる”雰囲気を意識して今後に繋げたいと思います。
多くの方にご参加いただきありがとうございました。

会場の様子:聞くだけではなく、参加型の内容で子どもでも飽きさせず分かりやすく、目で見て分かるよう工夫しました。
第2回(通算第63回)「高温化時代の学校建築を考える」
概要
- 日時:令和6年(2024年)6月19日(水曜日)17時30分~19時
- 場所:くらしふと信州(長野市門御所町1250₋1)
- 話題提供者:中谷岳史(信州大学工学部・建築学科助教授)/司会:浜田崇(環境保全研究所・自然環境部・主任研究員)
- 参加人数:9名

内容
- 地球温暖化の進行により外気温が上昇するのに伴い、学校教室の室温も上昇して生徒の熱中症リスクが増加しています。
- 対策として導入されているエアコンですが、冷房の使用による電力消費量増加のため温室効果ガス排出量も増加するという悪循環が起こっています。
- 熱中症リスクの軽減と温室効果ガス排出抑制をバランス良く実施するにはどうしたらよいか、その解決方法を考えます。
当日の様子
会場からも随時多くの質問が出て、活発なやり取りが行われました。アンケートでは
- 住宅と学校では建物の特徴が異なるので、断熱改修すべき場所の優先順位が異なることや、温暖化の進行により今後は暑さ対策の重要性が増すことなど、大変参考になりました。
- 回の内容は、とても大切なことなのですが、もっと万人に伝わりやすい内容で、とにかく広く周知し、現在とこれからの小中高生の未来の為の投資につながれば良いと思います。
- 短期の処置としては、屋根(天井)の断熱と、窓の遮熱(断熱)に絞って展開が必要かと思います。経常収支比率を早期に改善し、予算をこの短期処置に傾けることを願います。
- 中長期的には箱を新たにつくることはNGなので、30年後に向けて寺子屋のような投資計画もいいかもしれません。イメージは学校が減るのではなく、増える場合が考えられますが、他国との比較検討も必要ですね。
などのコメントもいただきました。
その他、
- 今回のサイエンスカフェの中で、「気象災害の中で最も犠牲者が多いのが熱波」というお話があったことを踏まえ、気象災害についてのお話(気象災害の種類、世界の状況、傾向の変化など)を聞いてみたいと思いました。
- 昨今、クマなどの野生動物が人里に現れるとのニュースをよく目にするので、日本や長野に生息する野生動物の現状や過去からの変化などについても聞いてみたいと思いました。
とのご意見もいただきました。関心がもたれている話題に対し、更に理解や知識を深めてもらえるよう、又対話を通じて研究者
との距離が縮まり気軽に質問が出来るような回にしていきたいと思います。
多くの方にご参加いただきありがとうございました。

会場の様子:近年の高温化は誰しもが肌で感じている異常気象です。次世代を担う子どもたちを育む環境をどうしていくべき なのか、専門家の意見から目で見える数値・実物を用いて可視化することで1人1人が考える機会を持つことが出来ました。
第1回(通算第62回)「信州の気候の多様性と可能性」
概要
- 日時:令和6年(2024年)5月22日(水曜日)17時30分~19時
- 場所:くらしふと信州(長野市問御所町1250-1)
- 話題提供者:栗林正俊(環境保全研究所・自然環境部・研究員)/司会:尾関雅章(同・主任研究員)
- 参加人数:9名

内容
- 信州には多様な気候が存在します。この信州の気候の多様性は、周囲を暖流が流れる島国・日本の中央部にありながら、2000mを超える山に囲まれた地形に由来しています。
- 過去130年以上にわたる気象観測の結果に基づくと、信州の気候は1980年代から急速に温暖化していて、猛暑や豪雨の頻度と強度が増加している可能性があります。
- 最新の気候予測に基づくと、21世紀末の信州の気温は今よりも0.7~6.7℃上昇する可能性があります。この予測は、温室効果ガスの排出シナリオや全球気候モデルによって異なります。温室効果ガスの排出量を削減していくことが、将来の昇温量を抑える上で重要になります。
当日の様子
アンケートでは
- 地球規模の大きな変動やその傾向も知りたいですが、今の自分たちでできる小さなことでどの程度の効果があるのか、環境を守る希望はどこにあるのか知りたい。
- 局所的な気象現象が取り上げられることが多いように思いますが、話の中にあった平均降雨量の大きな変動がないことに驚きました。
などの反響をいただきました。
多くの方にご参加いただきありがとうございました。

会場の様子:10代から80代まで幅広い世代の方々が参加しました。全員が長野市在住の方で、自分が生活している地域の気候の変化は生活しているからこそわかるため、全ての世代に高い関心がうかがえます。少人数の開催のため研究員との距離もおのずと近くなり、質問しやすい雰囲気になりました。普段聞きなれない単語も質問を交えながら進行し、密度の濃い時間となりました。
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください