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更新日:2017年8月3日

災害に強い森林づくり

●事例集「災害に強い森林づくりのススメ」は こちら(トップページへ)

森林の土砂災害防止機能に関する検討委員会

 長野県は、平成18年7月に大規模な豪雨災害に見舞われ、連続累積雨量400mmを記録した県央部を中心に76億円を超える林地被害が発生し、12名の尊い人命が失われました(写真1)。

 本県ではこの災害を教訓に、森林の土砂災害防止機能を強化し、山地災害から県民生活の安全・安心を確保するべく、大学・研究機関等の有識者参加の下、「森林の土砂災害防止機能に関する検討委員会」を計10回開催し、平成20年1月にその検討結果を『災害に強い森林づくり指針』として公表しました。  

「森林の土砂災害防止機能に関する検討委員会」の取組み をより詳しく知りたい場合は こちら

『災害に強い森林づくり指針』については こちら(847KB/A4/22P)

岡谷市小田井沢の災害発生直後の状況

(写真1)平成18年7月豪雨の土石流で7名の人命が失われた岡谷市小田井沢の災害発生直後の状況

 

災害に強い森林づくりとは

 平成18年7月豪雨災害の最大の被災地であった岡谷市西山地区では91箇所、2.39haの山腹崩壊が発生しましたが、災害が発生しやすいとされていた幼齢林ではなく、その大半は里山の樹木に覆われた一見豊かな壮齢林で発生しており、災害の発生形態が変化してきているといえます(写真2)。

 そのような状況に対し、一般的な里山では、1.複雑な林相、2.細かい所有形態、3.多様な所有者の意識等の問題から、森林全体の目標林相・管理手法等が見えにくく、どのように整備すればよいか分りにくいという問題があります。

 そこで例えば、ゼロ次谷や、沢筋などの多湿な環境に、根系の酸素要求度が高い(=多湿な環境を好まない)カラマツが適正管理されていない状態で生立する林分は危険、逆に沢筋に多湿な環境を好むスギが生立する林分は災害抑止の可能性があるなど、防災上特に重要な林分をゾーニングし、集中的に整備する手法が有効と考えられます(図1)。

 ここで、本県で平成21年7月末から8月上旬にかけて発生し、県下に約19億円の山地被害をもたらした梅雨前線豪雨災害では、適正管理されていない森林が生立するゼロ次谷が大規模崩壊の発生源となったこと、適正管理された森林でも崩壊は発生したが被害の拡大は最小限だったなど、森林の適正管理の必要性が改めて浮き彫りとなりました(写真3・4)。

 また、森林根系の効果が及ばない急峻な沢筋が土石流の発生源となったものの、既存の治山施設の効果で下流への被害が最小限だった箇所もあり 、森林根系による土砂災害防止機能の限界と、施設整備の重要性が再認識できました(写真5)。

 これらのことを根拠に本県では、保全対象、樹種特性、立地条件、森林の管理履歴等の要因を総合的に判断し、「適地適木・適正管理」をキーワードに特に危険な森林をゾーニングして森林整備を実施し、必要に応じて施設整備を併用することを「災害に強い森林づくり」として推進しています(図2)。

 ヒノキ壮齢林での崩壊発生状況

 (写真2)平成18年7月豪雨災害におけるヒノキ壮齢林での崩壊発生状況

写真中央の緑の濃い林分が壮齢林で、写真左側の緑の薄い林分は幼齢林

 

災害に強い森林づくりにおけるゾーニングのイメージ図

(図1)災害に強い森林づくりにおけるゾーニングのイメージ図

ゼロ次谷における崩壊発生状況 適正管理林分での崩壊発生状況 治山ダムの土石流捕捉状況 災害に強い森林づくりの概念図

(写真3)平成21年梅雨前線豪雨災害におけるゼロ次谷における崩壊発生状況

(写真4)平成21年梅雨前線豪雨災害における適正管理林分での崩壊発生状況(崩壊は周囲に大きく拡大しませんでした)

(写真5)平成21年梅雨前線豪雨災害における治山ダムの土石流捕捉状況

(図2)災害に強い森林づくりの概念図

 

4つの柱による地域ぐるみの森林づくり

 「災害に強い森林づくり」の取組みを長期的な100年の計で継続的に進めていくためには、地域住民の協力のもと、最終的には「地域ぐるみの森林づくり」へ移行することが必要です。

 このため、1.全ての取組みの土台となる「理論」、2.人と森林の距離を縮める「基盤整備」、3.地域住民の森林づくりへの意識を醸成する「活力の導入」、4.災害を風化させない「情報発信」を地域ぐるみの森林づくりの「4つの柱」として、取組みを推進しています(図3)。

理論

 本県では、『災害に強い森林づくり指針』の策定にあたり、現地機関職員による十分な現地調査の実施と、「森林の土砂災害防止機能に関する検討委員会」の開催等により、災害の発生形態及び立木根系の土砂崩壊防止機能等を定量的に明らかにし、これらの理論を全ての取組みの土台としています。

 現地調査や検討委員会では、地道な現地調査のみならず、立木引き倒し試験、地質調査、航空レーザー測量等の専門的な調査も併せて実施しました(写真6)。

 そして、指針公表以降も災害調査を継続実施し、理論の蓄積・裏付けに努めています。

基盤整備

 本県では、治山事業の基本方針として「災害に強い森林づくりを原点とした治山事業」を掲げ、災害に強い森林づくりを具体的に事業実施しています。

 各地域の事業計画では、施設整備と併せて崩壊地周辺など崩壊の危険の高い林分を対象とした森林整備を実施しており、砂防事業とも十分な連携を図った上で、特に危険な箇所から優先的に対策を実施しています。

 また、一部の地域では、住民と森林との距離を縮めるための管理車道の開設や、GPS・GISを駆使して森林所有界を確定(法的な境界ではありません)するなどの取組みも実施しています(図4)。

活力の導入

 将来的に「災害に強い森林づくり」を地域ぐるみの森林づくりへに委ねていくためには、これまでの「行政主導」から「地域主導」の森林づくりへ段階的に移行させることが必要です。

 これには地域住民の意識醸成が不可欠であるため、まず地区役員などの「地域のリーダー」に協力を働きかけ、そのリーダーの協力のもと、様々な取組みの実施を各地域で呼びかけ、森林づくりへの活力の導入を図っています。

 その結果、まだ一部地域での取組みですが、治山事業施工地での植樹祭、植樹後の保育活動、地区住民自らが行う森林調査の研修、地区開催のイベントでのブース出展などが、地区主催という形で実施されています(写真7)。

情報発信

 災害による悲惨な体験を風化させず、そして県による「災害に強い森林づくり」の取組みを広く周知するために、本県では、第一に県担当職員から事業関係者である地域住民へ、第二に公共事業の費用負担者である一般県民のみなさまへと、段階的な情報発信を行っています。

 地域住民への情報発信としては、「災害に強い森林づくり」に係る説明会の実施を重点的に実施していますが、その実績は下記のとおりです。このうち、平成19年度以前は平成18年7月豪雨災害が発生した諏訪地域で限定的に説明会が実施されていましたが、指針が公表された平成20年度以降は、全県で説明会が実施されるようになっています。

●平成18年度 41回(7月豪雨災害以降) ●平成19年度 25回 ●平成20年度 122回

平成21年度 111回 ●平成22年度 77回 ●平成23年度 32回 ●平成24年度 31回

●平成25年度 22回  ●平成26年度 36回 ●平成27年度 61回 

 (※この実績には工事説明会は含めていません。平成23年度以降の実績は、地域と協同で実施した啓発行事のみ記載しています。)

 また、一般県民への情報発信としては、マスコミへの積極的な情報提供に重点を置き、新聞、テレビ、ラジオなどで「災害に強い森林づくり」に係る多くの話題を取り上げていただいています。

 地域ぐるみの森林づくりの4つの柱の概念図

 (図3)地域ぐるみの森林づくりの4つの柱の概念図

航空レーザー測量による赤色立体地形図

 (写真6)航空レーザー測量による赤色立体地形図

山地災害発生箇所における森林所有界確定の状況

 (図4)平成18年7月豪雨災害の山地災害発生箇所における森林所有界確定の状況

治山事業施工箇所における地区主催の植樹祭の状況

 (写真7)治山事業施工箇所における地区主催の植樹祭の状況

地域住民への「災害に強い森林づくり」に関する説明会の状況

 (写真8)地域住民への「災害に強い森林づくり」に関する説明会の状況

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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お問い合わせ

林務部森林づくり推進課

電話番号:026-235-7272

ファックス:026-234-0330

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