インターネット版広報ながのけん8月号 2015年8月発行 特集:「信州の山」を楽しく安全に ■1ページ目  たくさんの恵みをもたらす「信州の山」は私たちの宝です。特に、登山を楽しむ方にとって、山頂に立つ達成感や、登山案内人のアドバイスを受けながら楽しむ景色は格別です。楽しく安全な登山で「信州の山」の魅力を存分に味わってください。 「信州 山の日とは」・・  県民共通の財産であり、貴重な資源である「山」に感謝すると共に、「山」を守り育てながら活かしていく機運を醸成するために、7月の第4日曜日を「信州 山の日」、7月15日から8月14日までの1か月間を「信州 山の月間」と定めました。 長野県登山安全条例(仮称)について  県では、日本を代表する山岳県にふさわしい登山の安全対策を推進するため、条例の策定作業を進めています。現在、骨子(案)について皆さまからお寄せいただいたご意見をとりまとめています。 安全登山シミュレーション 〜太郎さんと次郎さんの夏山登山準備編〜  家族で野尻湖を訪れた際に、雄大な北信五岳(ほくしんごがく)にすっかり魅了されてしまった太郎(40歳)は、同僚で登山経験の豊富な次郎(45歳)と一緒に山に登ることに。約1か月後の登山に向けた「登山初心者」太郎さんの準備の様子を皆さんと一緒に確認していきましょう。→2ページへつづく ■2ページ目 安全登山シミュレーション 〜太郎さんと次郎さんの夏山登山準備編〜 「初心者」太郎さん 「ベテラン」次郎さん 1.体力づくり・体調管理は万全に!  ジョギングが趣味の太郎さん。登山に備えて、週末の「坂道ウォーキング」を新たに始めました。また、十分な休養と睡眠をとって登山に備えます。 2.「登りたい山」の情報収集 (標高、行動時間、危険箇所等) 3.信州 山のグレーディング  県内の主要な登山道を「体力度」(10段階)と「技術的難易度」(5段階)で評価。長野県に続き、隣接する新潟、山梨、静岡でも作成!より多くのルートが対象になりました。  北信五岳のうち、具体的にどの山に登ろうか?最新の登山地図を購入し、詳しく調べ始めた太郎さん。「登りたい山」3座のデータをまとめてみました。        標高  ※コース 体力度 技術的             タイム     難易度   戸隠山 1,904.0m   6:35   3    D   飯縄山 1,917.4m   4:45   2    B   妙高山 2,445.9m   8:15   4    B   ※コースタイムは、@40〜50歳の登山経験者が、A2〜5名のグループで行動する場合を想定 4.山の情報と自分の力量を比較して「登れる山」を選ぶ  「太郎さんが学校登山以来の登山となることを考慮して」(次郎さん)、今回は飯縄山を目指すことに決めました。 5.メンバーと一緒に綿密な登山計画を作成  太郎さんは同年代の男性より体力に自信があるとはいえ、久しぶりの登山。そこで、2人で相談してコースタイムの1.2倍で計画を立てることにしました。 6.登山計画書を作成し、必ず家族や、友人等に託す  「昔は入山直前に登山口で記載したけど、今はインターネットを使って事前提出できるから、ずいぶん便利になったよ。」と次郎さん。今回は次郎さん指導のもと、太郎さんが作成・提出します。  ○日本山岳ガイド協会運営の「コンパス」から ○長野県警察ホームページ「山岳情報」の電子申請から 7.事前の天候を確認し、余裕を持った日程で出発  山は「早出・早着(はやで・はやちゃく)」が大原則です。急な雷雨等にも慌てずに行動できるような「ゆとり」をもって、「いってきます!」 ■3ページ目 信州登山案内人が語る、信州の山の魅力  信州登山案内人、戸隠登山ガイド組合事務局、戸隠地区山岳遭難防止対策協会救助隊リーダー 秦(はた) 孝之 さん  本年3月、全国32番目の国立公園として新たに指定された妙高戸隠連山国立公園一帯を主な活動エリアに、信州登山案内人として活動されている秦 孝之さんから、信州の山の魅力を語っていただきました。 ○東京から戸隠へ  東京の出身ですが、幼い頃から屋外で遊ぶことが大好きで、高尾山にもよく登っていました。私と信州との接点は大学時代。最初のきっかけは毎冬通い詰めたスキーでしたが、知り合いに誘われて戸隠山に登ったことをきっかけに夏の魅力にも完全にとりつかれてしまい、生涯の拠点を戸隠に構えることに迷いはありませんでした。 ○プロフェッショナルに徹する  プロの山岳ガイドとして常に意識していることは、安全の確保と自分が出過ぎないということ。全てにおいて安全を最優先するのは言うまでもありませんが、自分の持っている知識を一方的に押し付けるのではなく、「ホスト」としてお客さまの関心がどこにあるのかを感じながら接するように心がけています。 また、最近はインターネットから入手できる情報量も多く、お客さまに満足していただくためには地元ガイドならではの情報発信がとても重要だと考えています。  あと、実は大事なのが見た目というか雰囲気、オーラですね。待ち合わせの場所が登山者で多少混雑していたとしても、お客さまから、「あの人!今日のガイドさんじゃないかな。」と先に気付いてもらえる風格ですよね。カッコ良さでも一目置かれる存在でありたいと思っています。 ○信州の山の魅力  一言でいえば、いろいろな楽しみ方を提供できること、に尽きるのではないでしょうか。3,000m級の山の頂上を極めたい人からのんびりと里山歩きを楽しみたい人まで、訪れる人々を魅了してくれる多彩な「山」の存在は何よりの強みです。 私の「庭」である妙高戸隠連山国立公園のエリアに関して言えば、3,000m級の山こそないものの、火打山、妙高山、高妻山、雨飾山の日本百名山4座があるほか、岩場に挑戦してみたい方には戸隠山、学校登山向けによく利用される飯縄山など、バラエティに富んだ山々をご案内することができます。 里山でも戸隠五社神社を中心とした戸隠古道。日本有数の野鳥の宝庫である自然など、ここでは挙げきれないほど充実していますね。  また、それぞれ地元の山々に精通した案内人・山岳ガイドが県の全域を網羅しているのも長野県の特長だと思います。良いガイドに巡り合えることによって、山歩きも充実した楽しいものになることは間違いありません。 信州登山案内人とは・・・  「信州登山案内人」は、長野県が実施する筆記・実技試験に合格し、以下の4つの能力と知識を有する、全国で唯一※、都道府県知事の登録を受けた山岳ガイド。ひと味違う信州の山の楽しみ方を教えてくれます。現在、約400人が活動しています。  ※平成27年4月1日現在、都道府県条例に基づく資格として全国唯一。 安全確保能力  ガイドの基本であり、最も大切な「判断力、技術力、統率力」などの安全確保能力を持っています。 登山に関する知識  読図、気象、救急法、動植物など、登山にまつわる知識が豊富です。 信州の山に関する知識  「信州の山」を楽しむための山の歴史や文化、登山史、山小屋の歴史などの知識を持っています。 コミュニケーション能力  楽しくて安全な登山に大切なのが信頼関係を築くこと。おもてなしの心で登山者の皆さまをお迎えします。 ■4ページ目 連載:信州健康長寿のヒ・ミ・ツ ♯3 「赤沢自然休養林を活用した森林セラピー」  長野県立木曽病院 院長 井上 敦 さん(ATSUSHI INOUE)  長野県では、現在、県民一人ひとりが主役の健康づくり県民運動「信州ACE(エース)プロジェクト」を推進中。連載企画「信州 健康長寿のヒ・ミ・ツ」では、さまざまな分野で活躍中の皆さんが、信州の健康長寿について語ります。  第3回は、県立木曽病院の院長 井上 敦さん。平成18年度から取り組んでいる「森林セラピー」サポート事業についてお伺いしました。「Action(体を動かす)」と「Check(健診を受ける)」を上手に組み合わせた木曽地域の特色ある取り組みをご紹介します。 ○病院と森林の組み合わせで地域活性化  当院は、県の南西部に位置し、古くから林業で栄えた木曽地域における唯一の総合病院です。また、木曽地域の高齢化率は38%と県内の中でも最も高く、また年々人口の減少も顕著です。  そこで当院が提供できる人材、医療設備と、赤沢自然休養林(木曽郡上松町:ヒノキの天然林や森林浴発祥の地として全国的に有名)を始めとした豊かな自然を組み合わせることで、地域の活性化につなげられないか、ということで始めたのが森林セラピーの取り組みです。 ○健康状態に合わせてガイドが散策指導  まず、当院で健康診断を受けて健康状態をチェックし、散策コースと歩き方をアドバイス。その内容を「処方箋」として作成し、翌日、赤沢自然休養林のガイド(森の案内人)に提出します。ガイドは処方箋の内容を踏まえ、利用者の体調に合わせ難易度の異なる散策コースの中からご案内していきます。 ○森林セラピー効果の検証  森林浴におけるリラックス効果は以前から知られていましたが、これまでの実験によってストレスホルモン濃度の低下やリラックス状態で高まる副交感神経活動の活性化などの効果が明らかになってきています。(日本医科大学 李ほか)  病気に対する効果を検証するために、平成25年から日本医科大学、千葉大学等と協力して境界域高血圧の方を対象にした臨床実験にも参加しています。  現在は、赤沢自然休養林のみを舞台に実施していますが、今後も地域と協力して、より幅広く木曽郡内の豊かな自然環境を生かせるよう、取り組んでいきたいと考えています。 ○お問い合わせ・お申込み先  森林セラピードック(5月〜10月) 上松町観光協会 0264(52)1133 ○利用者の声  赤沢の森の香りが、とても気に入った。自宅へ帰って近くの森を歩いて見たが、赤沢のような香りは感じられなかった。  初めて本格的な森林を歩くことになり、少し怖かった。お医者さんから詳しい説明や案内を受けて、とても安心して歩くことができた。  都会の夏は散歩をする気分にならないが、赤沢は涼しくて朝夕に散歩が楽しめる。おかげで、足のむくみが取れた。 信州ACE(エース)プロジェクトとは  長野県が展開する健康づくり県民運動の名称です。  ACEは脳卒中等の生活習慣病予防に効果のあるAction(体を動かす)、Check(健診を受ける)、Eat(健康に食べる)を表し、世界で一番(ACE)の健康長寿を目指す想いを込めたものです。 ACEを実践しよう!「信州ACEプロジェクト」♯3 「自然観察ウォーキング サマーキャンプ」  夏の猛暑の中では、過度な運動は大変危険です。そこで、涼しげな高原での自然観察会に参加し、ガイドの案内を聞きながら楽しくウォーキングはいかがですか。  また、親子キャンプでの、野菜たっぷりのカレーづくりは親子の絆が深まり、野菜嫌いも解消するかも。  お出掛けの際は、紫外線対策もお忘れなく!